匠の技で着る人の品格を磨く
いい洋服づくりのポイントは、まず、その人の体格に合わせて生地を選ぶことから始まります。
神戸洋服の特徴は仕立てがいいこと。
1㎜でもズレが生じると一気に見た目が野暮ったくなります。着るほどに体になじむ服。無駄のないフィット感が着る人の品格と風格を磨く一着となります。
お客様と充分に対話しながらデザインを決めて作業を進めていき、熟練された匠の技で、お客様の品格と風格を磨くお手伝いさせていただきます。
紳士服の中でもひときわ難しいとされるタキシードの縫製で、特に拝絹(襟の部分の絹布)の仕上げとバランスの基本になる袖付けの技術の高さで定評をいただいております。繊細な絹を扱うものですから、傷つけないよう気をつけ手で丁寧に折りながら仕上げ、いたわりながら作り上げていきます。
最近では、ご依頼があればタキシードの講習会の講師として出向き、技術の継承にも取り組んでいます。
〜 近代洋服発祥の地・あこがれの街神戸へ 〜
明治期、海外からスーツやタキシードといった近代洋服が持ち込まれた神戸では、職人たちが英国人から仕立てを学び腕を磨いてきました。
丁寧で繊細な仕事ぶりは、洋行帰りの目の肥えた紳士にも高く評価され、約150年以上の歴史を紡いてきた「神戸洋服」。
神戸の地場産業の中でも、神戸洋服はファッションの中核ともいえ、ファッション都市を形作るのに神戸洋服の技術力が与えた影響は大きいと言えます。
そんなあこがれの神戸へ広島の田舎から勇躍してきたのは佐伯博史が19歳の時でした。
「飛び込むなら技術の本場」「いい仕事を身につけたい」という想いを胸に。
それから60年の間、阪神淡路大震災では被災しましたが、神戸洋服の歴史を守り、佐伯洋服店の仕立てに惚れ込んでいただいているお客様のため奮起してきました。
近年では、後継者不足の問題に直面しつつも打開に繋げようと「神戸ものづくり職人大学」を神戸市産業振興財団の協力のもと開校しました。ものづくり職人大学は18年間続き、惜しまれながら閉校しましたが39名の卒業生に神戸洋服の技術が受け継がれました。佐伯洋服店の店主は、主任講師として後継者育成に注力してきました。
この神戸に恩返しをしたいと、現在は小中学生に神戸のものづくりの技術を教えています。